京のしらべ その六
九月、秋です
九月、秋です。新学期、衣替え、芸術の秋、スポーツの秋、いろいろですが、何といっても食欲の秋・・・。おいしい物がたくさん出回ります。果物も豊富ですが、秋の味覚として先ず挙げられるものは松茸でございましょう。京都はその生産の大半を占めています。春の筍と同様それは、それは大切に致します。そのまま炭火で焼いて指先で裂きながら「ふうふう」言って食べる・・・、こんな贅沢な頂き方は最近ではできなくなりました。せいぜい「どびんむし」か「松茸ごはん」といったところでしょう。
京都はさすが産地、今だに松茸狩りもできます。木立の間の丘にむしろを敷き、七輪に炭火とぃった膳立てがしてあり、味の贅沢を満足させてくれる処がいくつかあります。
お江戸では先ず「さんま」というところですが、京都は「さば」がおいしくなります。「京のしらべ その二」でお話申し上げたように、一塩にして大津の山を越えてきた魚を何よりのなま物として大切に致しました。「さば鮨」の味は工夫を重ねてきた京都の味でございます。これから深まる秋に向かっていろいろの行事、もみじ、春の桜と対照的な美しさをたのしませてくれることでございましょう。