京のしらべ その二
「おべんとう・点心」その(二)
「京都」、それだけで美しいひびきを感じます。京都の人は江戸城へ移られた皇家がいつか必ず京都によみがえると信じて、今も懸命に京の都というものを守り続けております。
生産物の貧しい盆地特有の気候の中で、二次生産的なものを工夫するより他ならなかったのでございます。若狭で取れた鯖を、ひと塩にしなければ大津の山を越えて来ることができなかった、その魚を〆め鯖ずしとして世に出した工夫。生麩・生湯葉・漬物、京料理には欠かせないものでございます。
「飛龍頭」(ひろうす・京がんも)豆腐料理は有名ですが、きれいな水から生まれた、絹とも木綿ともいえない舌ざわり…。絹と木綿の割合、絞り加減、とうふやさんと私共との意気が合うまで長い時間がかかり、二宮へ参りましてやっとこの頃、納得のいくものが出来るようになりました。
北陸へ参りますと、採れたての甘鯛(若狭ぐち)の塩焼きなど、うろこが立ってそれはおいしゅうございます。京都の人はそのぐぢを切り身にして、西京みそに漬け、全然別の魚として供しました。「焼き物」、お弁当にはなくてはならない物の一つでございます。
このように一つ一つ工夫されたものが一つの器に盛り付けられ、ふたを取るのがたのしみとおっしゃって頂ける“うつわ”にも命がございます。