京のしらべ その一
「おべんとう・点心」その(一)
今でこそ懐石べんとうは皆様よくご存知のことと存じ上げますが、三十年前、 あの鎌倉でさえ、駅弁ですかと聞かれた事もありました。お茶席で頂くのが茶懐石であり、おしのぎとして召し上がるのが点心、野立ての茶席で楽しむのが野立てべんとう。
京の茶人もきれいなお料理を三段に重ねた器に入れて仕覆に仕立てた袋のひもをといて、野立て傘の下での食事は絵のような風情であったと思います。中国から入った茶を利休によって広められ、ティーセレモニーとして日本を代表するものの一つにまでなりました。
中国の点心はおやつ。同じ点心という言葉がそのまま使われていることに不思議を感じます。長い間茶会、句会へと圓山べんとうをお運び続けて参りました。その後たちまちにして「何何べんとう」と名付けられたおべんとうが、観光地を賑わせています。京都の職人が京都の材料を調理し京都の器で召し上がって頂く圓山べんとうは、少さな店ながらご当地の皆々様にも可愛がって頂いて参りました。
大磯城山公園の如庵、秦野戸川公園のおおすみ山居でのお茶会、毎年桜の季節に開かれる吉田邸での野立てにご利用頂いております。色どりよくいろいろに味付けされたものを組み合わせ、一つの器に盛り込む、懸命な研究と絶え間ない努力、それは大変なものでございます。その(二)でその辺を。