京のしらべ その五
盂蘭盆会
八月は盂蘭盆会でございます。遠い日に見送られた方、新盆を迎えられる方、それぞれの思いを秘めて心からの法要をなさる事と存じます。箱根でも送り火の大文字焼焚きが行われますが、京都の大文字は東山のほかに「妙法」「舟形」「左大文字」「鳥居形」と五山の火が京都を囲む山々の中腹に点されます。東山如意ヶ岳、その一点にぽつんと赤い火がつく。点火五分前「大」の文字の中心で焚くこの火が、五山送り火の点火の合図でございます。闇の中で火の文字が描かれてゆく、人々は去来する想いを込めて夜空の火を見送ります。そして夏の終わりを感じるのでございましょう。
京料理の夏はなんといっても「鮎」と「はも」、以前お話致しましたように活きた生産物の無い京都では、小骨の多いはもの骨切りの技を得意とし、湯通しして「ぼたん」の花のように美しいものに仕立てます。奥深い鞍馬の山から出る清滝の流れに青もみじが映え、その涼しさの中で鮎の塩焼き、はもの椀、思わず舌づつみを致します。それにおべんとうは欠かせません。すだれの「ゆか」で流れの音を聞きながらのひとときは格別の味わいでございます。